考えられる理由は?咳と声枯れの原因と対処法

咳や声枯れは、日常生活で誰しもが一度は経験したことがあるでしょう。

たとえば、長時間の会話や大きな声を出す機会が多い方、風邪、アレルギーがある方など、さまざまな状況で声が枯れてしまうことがあります。また、咳が続くと喉に負担がかかり、声枯れにつながることもあります。

この記事では、咳と声枯れの原因や対処法についてご説明いたします。

1.咳と声枯れの原因とは


ここからは、咳と声枯れのさまざまな原因について、ご説明しましょう。

1-1.声のだしすぎによるもの

声を出しすぎは、喉に大きな負担をかける原因となります。

たとえば、長時間カラオケで歌う、スポーツ観戦で大声を出す、講演会や電話で長時間話すなどの状況です。

とくに大声や高い声を出そうとすると、声帯に強い力がかかり、喉に大きな負担がかかります。

喉に負担が蓄積されると声帯が腫れたり炎症を起こしたりして、声枯れの原因となるのです。

声の出しすぎによる声枯れは、無理をせず喉をしっかりと休ませることで、自然に回復することが多いでしょう。

しかし、頻繁に声を酷使する生活を続けていると、喉にかかる負担が積み重なり、声帯に影響を及ぼすこともあります。

「最近、声が枯れやすくなっているかも」「少し話しただけでも喉が痛くなる」という方は、日頃から少しでも喉を休めることを意識してみましょう。

1-2.痰切りのしすぎによるもの

痰切りとは、喉にたまった痰を出すために咳をすることを言います。

痰が多くなると、頻繁に痰切りをしなくてはならず、喉に大きな負担をかけ声枯れの原因となることがあります。

痰が多く出る原因は、風邪やインフルエンザなどの急性の感染症が多いですが、痰が慢性的な場合、より深刻な疾患の可能性も考える必要があります。

たとえば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核、気管支拡張症といった慢性呼吸器疾患では持続的な痰が特徴的です。

◆『知っておきたい「風邪」の基本知識と対処法』>>

◆『インフルエンザとはどんな病気?』>>

◆『COPDについて』>>

◆『気管支拡張症とはどんな病気?』>>

こうした疾患では、気道の炎症や構造的な変化によって、通常よりもさらに多くの痰が作られ、頻繁な痰切りが必要になります。

1-3.喫煙によるもの

喫煙は、咳や痰、声枯れの大きな原因のひとつです。タバコの煙には、4000種類以上の成分が含まれており、そのうち200種類以上が人体に有害であることが知られています。

これらの有害物質が気道を刺激し、さまざまな症状を引き起こすのです。

タバコの煙に含まれるニコチンやタールなどは、気道の粘膜を直接刺激します。この刺激により、気道は防御反応として粘液(痰)を過剰に分泌し、それを排出しようとして自然と咳が誘発されます。

長期的な喫煙は気道の線毛(気道の浄化をおこなう細かい毛)の機能を低下させ、痰の排出が難しくなるため、さらに咳や痰が増えやすくなります。

さらに、タバコの煙は声帯にも直接的な悪影響を与えます。

煙の熱と有害物質により、声帯の粘膜が乾燥し炎症が起こるためです。これにより声帯の振動が妨げられ、声枯れや声の変化が生じます。

慢性的な喫煙はこのような影響が蓄積され、咳や痰が頻繁に出たり、声が変わったりすることが多くなります。

また、喫煙はさまざまな呼吸器疾患のリスクを高めるため、声枯れを引き起こす間接的な原因にもなり得ます。

1-4.のどの老化によるもの

年齢を重ねると、肌や筋肉と同じように喉や声帯も少しずつ変化していきます。加齢に伴う声帯変化の要因には、主に以下のようなものがあります。

・声帯の筋力の低下:声を出すためには、声帯を支える筋肉が重要です。しかし、年齢とともに筋肉が弱くなり、声帯がしっかりと振動しにくくなることがあります。

・声帯の弾力性が減る:加齢によって、声帯の粘膜が薄くなり、弾力が失われます。その結果、声帯がしなやかさを失いスムーズに動かなくなります。

・声帯が縮んで薄くなる:声帯の組織そのものが少しずつ縮小するため、声帯が完全に閉じなくなり、声を出すときに隙間ができやすくなります。この隙間から空気が漏れると、声がかすれ、力が入らない弱い声になることが多いです。

また、加齢によって唾液の分泌が減少し、のどが乾燥しやすくなることも、声枯れの原因のひとつです。

乾燥したのどは刺激に敏感になり、少しの刺激でも咳が出たり、痰が増えることがあります。そのため、さらに声帯に負担がかかり、声枯れがひどくなることもあります。

これらのような喉の老化は誤嚥性肺炎のリスクとなりますので、改善は困難ですが、注意が必要です。

1-5.アレルギー

アレルギーは、咳や声枯れの大きな原因のひとつです。

ハウスダスト、花粉、ペットの毛などが主な原因となるアレルギー性の鼻炎や喘息は、気道に影響を与えさまざまな症状を引き起こします。

【ハウスダストアレルギー】
ハウスダストには、ダニの死骸やフン、カビの胞子などがあります。これらに対して、鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどの症状を引き起こします。また、喉の奥に流れ落ちる後鼻漏(こうびろう)が咳の原因となることもあります。

【花粉症】
花粉症も、咳や声枯れの原因です。花粉へのアレルギー反応により、鼻や喉の粘膜が腫れ、炎症を起こします。そのため、喉の痒みや刺激を引き起こし、咳や声枯れにつながります。

【ペットアレルギー】
犬や猫などのペットの毛や皮屑(フケ)に含まれるタンパク質にアレルギーがある方は、ペットとの接触後に咳や喉の痒みを感じることがあります。アレルギー症状が持続すると、声帯に負担がかかり、声枯れの原因となります。

1-6.服用している薬の影響

薬の種類によっては咳や声枯れの原因となることがあります。とくに注意が必要なのは以下のような薬剤です。

・血圧降下薬(ACE阻害薬)
高血圧の治療に用いられるACE阻害薬は、副作用として空咳(からせき)を引き起こすことがあります。これは、ACE阻害薬によりブラジキニンという物質が増加し、気道を刺激するためです。

・吸入ステロイド薬
喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使用される吸入ステロイド薬は、副作用として声枯れを引き起こすことがあります。これは、薬剤が直接喉や声帯に付着することで生じる炎症や刺激が原因です。吸入の仕方やうがいの徹底に工夫が必要です。

・抗ヒスタミン薬
アレルギー症状の緩和に用いられる抗ヒスタミン薬は、副作用として喉の乾燥を引き起こすことがあります。乾燥した喉は刺激に敏感になり、咳や声枯れの原因となる可能性があります。

・利尿薬
心臓病や高血圧の治療に使われる利尿薬は、からだの水分バランスに影響を与えます。これにより、喉の粘膜が乾燥し、咳や声枯れを引き起こす可能性があります。

・特定の抗がん剤
一部の抗がん剤治療は、喉の粘膜に影響を与え、炎症や刺激を引き起こすことがあります。これにより、咳や声枯れが生じる場合があります。

これらの薬剤による副作用は、個人差が大きく、全ての方に現れるわけではありません。

また、薬剤の効果が副作用を上回る場合も多いため、ご自分の判断で服薬を中止することは危険なため、症状がある場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

1-7.コロナウイルスの影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、症状のひとつとして咳や声枯れを引き起こします。感染初期から回復期まで長期間続く場合があります。

◆『新型コロナの咳の特徴や対処法』>>

新型コロナウイルス感染症による咳や声枯れの特徴は以下のとおりです。

・持続的な乾いた咳
初期症状として、乾いた咳が現れることが多いです。咳は数週間続くことがあります。

・喉の炎症
ウイルスが喉の粘膜に感染することで、炎症が起こります。この炎症により、喉の痛みや声枯れが生じます。

・呼吸困難
重症化した場合、呼吸が困難になることがあります。この状態で呼吸を続けると、喉に負担がかかり、声枯れの原因となります。

・長引く症状
症状は個人差が大きく、一部の方では長期間、咳や声枯れなどの症状が続くことがあります。

・二次的な影響
COVID-19による長期の入院や安静により、体力や喉の筋力が低下し、声が出にくくなることもあります。

1-8.その他の原因

咳や声枯れの原因はここまでご紹介した原因以外にも、さまざまな要因が考えられます。ここからは、そのほかの主な原因についてご説明しましょう。

・声帯ポリープ
声帯にできる良性の腫瘍で、声の使いすぎや喫煙などが原因です。ポリープにより声帯の振動が妨げられ、声枯れや声の変化が起こります。

・喉頭がん
喉頭(のど)に発生するがんで、初期症状として持続的な声のかすれや声枯れが特徴的です。

・喉頭炎
ウイルスや細菌による感染、声の使いすぎなどにより、喉頭に炎症が起こる状態です。急性と慢性があり、どちらも声枯れの原因となります。そのほかの症状には喉の痛み、咳などがあります。

・逆流性食道炎
胃酸が食道を逆流し、喉まで達することで起こる炎症です。夜間や食後に症状が悪化することが特徴的で、胸やけや喉の違和感とともに、声枯れを引き起こすことがあります。

・甲状腺の異常
甲状腺機能亢進症や甲状腺腫などの甲状腺疾患は、声帯に影響を与え、声質の変化や声枯れを引き起こすことがあります。

・神経学的疾患
パーキンソン病や多発性硬化症などの神経疾患は、声帯の動きに影響を与え、声枯れの原因となることがあります。

・心因性発声障害
ストレスや心理的な原因により、声が出にくくなったり、声質が変化したりする状態です。器質的な異常がないにもかかわらず、声の問題が生じます。

【参照文献】初心者・心理職のための臨床の知識 ここがポイント!~病態編~『喉の症状』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/58/6/58_548/_pdf/-char/ja

2.咳と声枯れがあるときはどうすればいい?


ここからは、咳と声枯れがあるときの対処法についてご説明いたします。

2-1.のどには温かい飲み物

温かい飲み物は、喉の炎症を和らげ粘膜を保護する効果があります。温かい液体が喉を通ると、血行が促進され、炎症部位の回復を早めることが可能です。

また、温かい飲み物は喉の筋肉をリラックスさせ、痛みや不快感を減らす効果もあります。

とくに、生姜入りの紅茶や緑茶は、喉の炎症を抑えるのに役立つとされています。

生姜には、ジンゲロールやショウガオールといった成分が含まれており、これらは炎症を抑える効果があることで知られています。

また、お茶に含まれるカテキンやポリフェノールも抗炎症作用があり、喉の健康に役立ちます。

ただし、カフェインが含まれている飲み物の飲みすぎには注意が必要です。カフェインには利尿作用があり、からだの水分を失いやすくするため、喉の乾燥を引き起こす可能性があります。

カフェインを含まないハーブティーやお湯なども、喉を潤すのに適した選択肢です。

2-2.部屋の湿度を調整する

部屋の湿度を適切に保つことで、咳や声枯れの症状を和らげることができます。

湿度が低すぎると、喉の粘膜が乾燥し刺激を受けやすくなります。一方で、湿度が高すぎるとアレルゲンが繁殖しやすくなります。

そのため、のどの乾燥を防ぐために、部屋を40〜60%程度に加湿するといいでしょう。加湿器を使用したり、濡れたタオルを部屋に干したりすることで、湿度を調整しましょう。

2-3.喉を休める

喉にも休息が必要です。声を出し続けると、声帯に負担をかけ炎症が悪化する可能性があります。

会話を最小限にする、小さな声で話すなどの対策が効果的です。必要な場合は、筆談やジェスチャー、メモを活用するのも良い方法です。

2-4.禁煙する

タバコをやめると、咳や声枯れの改善に大きな効果があります。禁煙後、数週間から数か月で喉の状態が改善し、咳や痰が減少することが多いです。

ご自分で禁煙が難しい場合は、禁煙外来への受診を検討しましょう。

禁煙外来では、ニコチン依存度に応じた禁煙補助薬の処方や、禁煙のためのアドバイスを受けることができます。

保険適用もあるため、比較的低価格で専門的なサポートを受けることが可能です。

2-5.のどのトレーニングをする

のどのトレーニングは、咳や声枯れの予防に効果的です。

適切なトレーニングにより、声帯の筋肉を強化し、より効率的で健康的な発声ができるようになります。

トレーニングには、カラオケや音読がおすすめです。カラオケでさまざまな音程や音量で歌うことで、声帯の柔軟性を高めることができます。

音読は、正しい発声法を意識しながら行うことで、声帯の筋肉をバランスよく使うトレーニングになります。

ただし、これらのトレーニングは無理のない範囲で行うことが重要です。過度なトレーニングは、かえって喉に負担をかけ、炎症を悪化させる可能性があります。

また、プロの声楽家や言語聴覚士に指導を受けることで、より効果的で安全なトレーニング方法を学ぶことができます。

3.症状によって違う。受診するべきは何科?


咳や声枯れの症状が続く場合、適切な診療科を受診することが重要です。症状の程度や性質によって、受診すべき診療科が異なる場合があります。

ここからは、咳と声枯れの症状別に、おすすめの受診科についてご説明しましょう。

3-1.咳の症状が酷い時

咳が酷い時は、呼吸器内科の受診がおすすめです。

呼吸器内科は、肺や気管支など呼吸に関わる器官の疾患が専門の診療科です。

◆『呼吸器内科でわかることとは? 受診の目安と一般内科との違い』>>

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

咳はさまざまな呼吸器疾患の症状として現れるため、呼吸器内科では、以下のような検査や診断が行われます。

・詳細な問診
・聴診や打診などの身体診察
・胸部レントゲン検査
・呼吸機能検査
・血液検査
・必要に応じてCT検査やMRI検査

なお、咳以外の症状がある場合は、診察時に詳しく伝えましょう。たとえば、発熱、痰の量や色、息切れ、胸痛などの症状です。それらの情報も咳の原因を特定する上で重要な手がかりとなります。

【参考情報】ClevelandClinic“Pulmonologist”
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22210-pulmonologist

3-2.声枯れの症状が酷い時

声枯れの症状が酷い場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。

耳鼻咽喉科は、耳、鼻、のどの疾患を専門に診る診療科です。声帯は喉頭にある器官であり、声枯れの多くは声帯の異常が原因で起こります。

声帯に異常があると、短期間では改善しない場合があります。そのため、声枯れが1週間以上続く場合や、繰り返し起こる場合は早めに受診しましょう。

耳鼻咽喉科では、以下のような検査や診断が行われます。

・詳細な問診
・喉頭内視鏡検査(のどの奥を細い内視鏡で観察する検査)
・音声機能検査
・必要に応じてCT検査やMRI検査

早めに受診することで、声帯ポリープや声帯結節、喉頭がんなどの重大な疾患を早期に発見し、適切な治療を開始することができます。

4.おわりに

咳や声枯れは日常的な症状ですが、長引く場合は対処が必要です。

2週間以上症状が続く場合、とくに、血痰、呼吸困難、持続する発熱、急な体重減少、夜間の咳悪化、声が出ないといった症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。